「未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)」の手術・治療件数の全国病院・専門医・名医ランキングです。2017年の実績ベース。厚生労働省(厚労省)のデータに基づいています。未破裂脳動脈瘤専門の医師がいる全国の病院が対象です。1位は大阪の富永病院、2位は埼玉医科大学国際医療センター、3位は宮城の広南病院となっています。(医療・介護情報メディア「リトリート」編集部)

手術件数ランキング(全国トップ30)~2017年実績

順位 病院名 手術数
1位 富永病院
(大阪)
410
2位 埼玉医科大学国際医療センター
(埼玉)
319
3位 広南病院
(宮城)
284
4位 神戸市立医療センター中央市民病院
(兵庫)
239
5位 札幌禎心会病院
(北海道)
231
兵庫医科大学病院
(兵庫)
231
7位 東京慈恵会医科大学病院
(東京)
226
8位 順天堂大学順天堂医院
(東京)
203
9位 済生会熊本病院
(熊本)
179
10位 横浜新都市脳神経外科病院
(神奈川)
176
11位 中村記念病院
(北海道)
167
12位 脳神経センター大田記念病院
(広島)
165
13位 岩手県立中央病院
(岩手)
164
14位 藤田医科大学ばんたね病院
(愛知)
161
15位 藤田医科大学病院
(愛知)
159
大西脳神経外科病院
(兵庫)
159
17位 獨協医科大学埼玉医療センター
(埼玉)
158
18位 国立循環器病研究センター
(大阪)
154
19位 小倉記念病院
(福岡)
147
20位 国立大阪医療センター
(大阪)
140
福岡大学病院
(福岡)
140
22位 順心病院
(兵庫)
138
23位 東京女子医科大学病院
(東京)
136
武蔵野赤十字病院
(東京)
136
25位 国立仙台医療センター
(宮城)
135
26位 獨協医科大学病院
(栃木)
133
27位 旭川赤十字病院
(北海道)
132
28位 名古屋大学病院
(愛知)
126
29位 流山中央病院
(千葉)
124
30位 虎ノ門病院
(東京)
123
横須賀共済病院
(神奈川)
123

手術・治療件数ランキング(全国トップ30)~2014年実績

順位 病院名 手術数 処置数 合計
1位 埼玉医科大学国際医療センター
(埼玉県日高市)
203 468 664
2位 富永病院
(大阪市浪速区)
233 216 452
3位 神戸市立医療センター中央市民病院
(兵庫県神戸市)
139 260 399
4位 国立循環器病研究センター病院
(大阪府吹田市)
116 277 390
5位 小倉記念病院
(福岡県北九州市)
122 248 372
6位 福岡大学病院
(福岡市城南区)
103 244 348
7位 順天堂大学医学部附属順天堂医院
(東京都文京区)
115 218 334
8位 東京慈恵会医科大学附属病院
(東京都港区)
130 204 333
9位 大西脳神経外科病院
(兵庫県明石市)
111 171 285
10位 虎の門病院
(東京都港区)
86 188 273
11位 藤田保健衛生大学病院
(愛知県豊明市)
176 69 249
12位 国立病院機構 横浜医療センター
(横浜市戸塚区)
108 138 245
13位 東京女子医科大学病院
(東京都新宿区)
185 55 240
14位 国立病院機構 仙台医療センター
(宮城県仙台市)
97 116 210
15位 福岡大学筑紫病院
(福岡県筑紫野市)
79 122 206
16位 脳神経センター大田記念病院
(広島県福山市)
88 115 203
17位 水戸ブレインハートセンター
(茨城県水戸市)
79 122 201
18位 中村記念病院
(札幌市中央区)
83 117 200
19位 横浜新都市脳神経外科病院
(横浜市青葉区)
59 137 193
20位 禎心会病院
(札幌市東区)
98 95 190
21位 獨協医科大学病院
(栃木県壬生町)
73 115 189
獨協医科大学 越谷病院
(埼玉県越谷市)
79 108 189
23位 シミズ病院
(京都府京都市)
47 135 183
24位 京都大学医学部附属病院
(京都府京都市)
64 112 178
25位 岐阜大学医学部附属病院
(岐阜県岐阜市)
69 93 161
26位 旭川赤十字病院
(北海道旭川市)
130 29 159
27位 海南病院
(愛知県弥富市)
50 98 156
28位 網走脳神経外科・リハビリテーション病院
(北海道網走市)
21 133 155
29位 葛西昌医会病院
(東京都江戸川区)
57 97 152
30位 横浜市立大学附属 市民総合医療センター
(横浜市南区)
57 88 144
大阪警察病院
(大阪市天王寺区)
52 91 144

未破裂脳動脈瘤とは

脳血管の分岐部に直径10ミリ前後の動脈瘤が発生し、それが破裂することによりくも膜下出血がおこります。

発症年齢は50~60歳代が最も多いのですが、最近では高齢者の発病が増加する傾向にあります。

動脈瘤は内頚動脈、前交通動脈、中大脳動脈などが主な発生部位ですが、そのうち動脈瘤が2個以上ある多発性動脈瘤が約20パーセントに認められます。

くも膜下出血が大量の場合には、高度の意識障害をきたし、重篤となりますが、最初の破裂発作では軽症の場合が多いのです。

しかし、一度くも膜下出血をおこした破裂動脈瘤は再破裂をおこすことが特徴的であり、再破裂発作がおこると重篤となって約3分の2は死亡します。

したがって、脳動脈瘤の治療にあたっては再破裂発作がきわめて重要で、これを予防するために外科的な手術が必要となるのです。

さらにくも膜下出血後2週間以内の時期には、脳の血管がきわめて細くなる脳血管れん縮が出現します。

このため脳血流に障害がおこり、片まひなどさまざまな症状を引きおこすのですが、重篤な場合はこの脳血管れん縮で死亡します。

この脳血管れん縮は、再破裂発作とともに脳動脈瘤の予後を左右する重要な因子なのです。

<引用文献>
「家庭医学事典―ビッグドクター・ハンディ判」

未破裂脳動脈瘤の治療(2010年)

治療・手術の判断

未破裂脳動脈瘤の手術は、現在不都合がないのに、将来起こるかもしれないくも膜下出血を回避するための予防的治療だ。「脳ドックで動脈瘤が見つかってしまった」という患者も多い。

脳の表面を覆うくも膜の下には、脳が活動するための酸素と栄養を供給する血管が走る。その血管に動脈瘤ができ、破裂してくも膜下出血をおこすと、血液が脳を圧迫し、あるレベルを超えると脳の正常な働きを困難にする。その結果、三分の一の人には後遺症が残り、三分の一は、命を落とすことになる。脳卒中の中でも致死率の高い病気だけに、脳ドックを受診し、未破裂のうちに治療する人も増えてきている。

日本脳卒中学会が「脳卒中治療ガイドライン2009」の中で、「未破裂脳動脈瘤の治療」について触れている。

それによると、患者の余命が10~15年以上ある場合に、下記のようなのケースで治療が推奨されている。

(1)大きさ5~7ミリ以上の場合

(2)5ミリ未満であっても、以下に該当する場合

  • 動脈瘤が複数ある
  • 破裂の多い脳底動脈、前交通動脈、および内頸動脈・後交通動脈分岐部などの部位に存在する
  • 動脈瘤の足元がしまって治療がしやすいもの、形がいびつで破裂しやすい場合

名古屋大学医学部附属病院の場合

治療の判断は、病院や医師の裁量も大きい。血管内治療の未破裂脳動脈瘤症例数37で最多の名古屋大学医学部附属病院では、四ミリ未満は経過観察。七ミリ以上は手術を推奨。四~六ミリは、手術する長所と短所を説明し、患者の意思を反映させる方針をとる。

大きさ以外にも動脈瘤の形、年齢などを考慮する。経過観察の際には、一年に一度程度、三次元CT検査を実施。形や大きさをチェックし変化が認められるときは、破裂リスクが高まるので、手術を勧める。

手術法

手術法・治療法には、開頭術(クリッピング術)と、血管内治療(コイル塞栓術)がある。

開頭術

開頭術では、頭蓋骨を開け、血管にできた動脈瘤の根元をチタン製のクリップで留め、動脈瘤の中に血液が入らないようにして破裂を回避する。治療の歴史も古く、術後経過が良好なら、再発の可能性は低い。こめかみの真下にある中大脳動脈や内頸動脈・後交通動脈分岐部の多くは、開頭術が適している。

ただし、脳の奥にある脳底動脈や、内頸動脈では、クリップをかける操作で、穿通肢と呼ばれる細い血管や視神経を傷害し、後遺症が残る可能性もある。

血管内治療

そこで、開頭術を補完する形で10年ほど前に導入されたのが、欧米を中心に実施されてきた血管内治療だ。血管にカテーテルを入れ、動脈瘤の中にプラチナのコイルを送り込む。コイルが入ることで、血流が滞り動脈瘤の中で血がかさぶたのように固まり、動脈瘤を塞ぐ。脳の奥の治療もでき、頭に傷が残らず、入院期間も短い。2010年7月、VRDと呼ばれる自己拡張型のステントで血管形成をして、コイルを入れる方法が保険適用となり、治療の可能性が拡大した。

大きな動脈瘤には向かない

ただ、血管内治療は大きな動脈瘤や、動脈瘤から重要な血管が出ているときには、向かない。また、手術中に破裂などで出血すると対応が難しくなる。さらに、塞いだはずの動脈瘤に再度血液が入ってしまうケースが、10ミリ以下の動脈瘤で3~10%生じ、その際は再度手術となる。そのため術後検査が欠かせず、術後は、血液の流れをスムーズにする抗血小板剤を服用せねばならない。こういった治療の安全性を確保するために日本脳神経血管内治療学会では、専門医制度を設け、手術実績をもつ指導医を認定し、HPで公表している。

開頭術と血管内治療双方を手がけ、患者に応じて使い分ける施設もあるが、多くは、得意の施術方法をもつ。治療法のみならず、治療をすべきかどうかで迷ったときは、セカンドオピニオンを受けるか、「先生が私の立場ならどうしますか」という質問を主治医に投げかけてみると、心を決める答えが聞けるかもしれない。

医師の技量で差が出る

ミリ単位の頭蓋内の血管を扱う非常に難度が高い治療だけに、100%の成功率を期待すべくもなく、手術の技量が施設や医師で大きく差があるのも事実だ。

主治医に納得できない場合

動脈瘤が見つかり不安がる患者に、大きさに関係なく手術を勧める施設もある。ガイドラインで推奨されている大きさは、5~7ミリ。主治医に納得できなければ、無用な手術を避けるためにも、別の医師の意見を聞くべきかもしれない。

脳ドッグ

くも膜下出血は、高血圧、糖尿病、喫煙、くも膜下出血に罹患した親類がいる人、頭痛持ちなどに多い。該当するなら、結果を冷静に受け止める、と心に決め脳ドックを受けたい。

関連ニュース記事

七夕祭り開き、患者を励ます 大月市立中央病院 /山梨

1996年7月7日、朝日新聞

長期療養のお年寄りが入院している山梨・大月市立中央病院(根岸能之院長、現院長:山崎暁 医師)の4階病棟1996年7月6日、津室登茂子婦長(49)ら18人の看護婦さんと職員が1日早い七夕祭りを開いて入院患者を励ました。白衣をゆかたに着替えてハーモニカ演奏や日本舞踊などを披露、患者も琴を演奏したり七夕にちなんだ歌を合唱したりして楽しんだ。

会場には車いすに乗ったり、点滴を受けたりしている患者の姿も。「元気になれますように」「家に帰られるように」などと、七夕飾りの短冊には病気の回復を願う患者の思いがつづってあった。

4階病棟は1996年春、山梨県東部地区に初めて設けられた長期療養型病棟で、脳こうそくや脳出血などのために体やことばが不自由になった65歳以上のお年寄り35人が入院している。

入院患者の心をいやす--大月・中央病院でコンサート /山梨

1999年11月26日、毎日新聞社

山梨県大月市花咲の大月市立中央病院(根岸能之院長、現院長:山崎暁 医師)ホールに1999年11月25日夕、バイオリンが奏でる美しいメロディーが流れた。演奏したのは全国各地の福祉施設などでボランティア演奏を続けている東京交響楽団コンサートマスターの大谷康子さん。コンビを組む小山さゆりさんのピアノを伴奏に、バッハ「G線上のアリア」など10曲を披露し、入院患者の心をいやした。

大谷さんらを招待したのは、郡内の女性ボランティア団体「国際ソロプチミスト山梨-扶蓉」(水島幸子会長、会員32人)。患者や医師、看護婦ら約200人であふれたホールに、大谷さんはピンクのドレス姿で登場。クライスラー「愛の喜び」、ブラームス「ハンガリー舞曲」のほか映画音楽などを演奏、合間には曲の由来などのエピソードを話し、「早く治してコンサートを聴きに来て下さい」と患者を励ました。

大月市立中央病院 初の経営診断へ 1999年度赤字採算の改善策求め=山梨

2000年9月29日、読売新聞

山梨県大月市は近く、専門コンサルタントに依頼して大月市立中央病院(根岸能之院長、現院長:山崎暁 医師)の初の経営診断を行う。

大月市立中央病院は1962年9月の開設。内科、外科など13科を有し、山梨県東部の中核病院として地域医療を担ってきた。しかし、上野原町立病院や都留市立病院などが相次いで開設される中、患者数が減少。1999年度の患者数は1998年度より1759人少ない23万586人となり、1999年度の決算認定案では5年振りに約3700万円の赤字を見込んだ。

経営診断では、外部の専門コンサルタントに、各年度の病院事業会計決算や全職員278人の配置実態、各科診療行為、患者数や公衆衛生活動収益などの分析を依頼。収益や採算の改善策を提言してもらう方針。大月市立中央病院では「出来るものから早期に改善し、市民に信頼される病院を目指していきたい」としている。